福田奈美

美しい何か

鬱憤が溜まることはよくあること。目の前にいたら殴ってやりたい、って物騒な話。忘れられるもんならきっと忘れている。坂口安吾の本でも読んでやろうかと脈略のないこと考える。堕落論か恋愛論か、安吾の本はきっと私の味方をしてくれる。安吾はいい人だ。

いまそこから、何が見えるだろう。愛なんか見えやしない。美しいもの?目の焦点が合わなくて見えない。見えるのは画面に貼り出された、関数式だけ。世の中には普遍的なものと、必ずひとつのものにおさまるものがある。抽象的なこと言えば、すべてが分かったかのような気になったりして。偉そうに背後から近づいてくる。正面だろ、正面。何も見えない、何も感じない、何も聞こえない言葉だけが、目の前で踊っている。クラウドに格納された想いは自分すらも取り出せず、ひとつずつ消えていく。悲しいほどに、嫉妬して。こんな想いはどこに辿り着くのだろう。

明日の私はあなたを思い出すことはないだろう。なぜなら、あなたを忘れたことがないから。

美しいものがすべてにおいてすばらしいものかどうか、今の私にはわからない。破滅的な何かが美しいと思えることもある。

だんだんと夜明けは早くなる。はじまりは早くなる。言葉がバラバラになって消えないうちに、この想いを残したい。

 

明日の今は何かとたたかっている。あなたのために。自分のために。あなたが守りたいものは何?私が守ろうとしているものは。決して美しいなど思われない私の心が誰の目にも触れないように。